ラーメンメモ
紫蔵というラーメン屋がうまい。そのラーメン屋がうまい、と教えてくれた、夏にはほぼ毎日通いつめていた彼の人は、紫蔵がからんだ話になると目が輝き、ラーメンソムリエのごとく私に紫蔵のラーメンを食すときのポイントを教え諭すのでした。ある日は、暖簾をくぐる前くるりと振り返っていわく、いま、麺固めか、スープはどうするか、考えておくのがいいんです、と、それが教え。彼がどのくらい紫蔵に足しげく通っていたかを示すことのひとつに、彼の飼い猫二匹が、ラーメン屋の前についてきては、食べ終わるまで待っていた。暖簾をくぐり出てくると、ちゃんと他の人と見分けて、電柱の影からさっと飛び出し、道路をジグザクに交差してついてくる。
というあんなに毎度のことだった彼と猫の習慣も、最近ではとぎれてきた。彼は昼間に汗をかかなくなったので、紫蔵のラーメンを食べて滋養と塩分をそうとらなくてもよくなり、猫どもは、寒くなったので、夜の散歩に興味がなくなったのでした。
秋も深まったけど、やっぱり紫蔵のラーメンはうまい。

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